庭で朝食を愉しむための小屋

施工:2015年10月

概要

今の暮らしを少し変えてみたい。家をリフォームするか?庭いじりをしてみるか?

そのような時、私たちは大抵、利便性や斬新性に心を奪われてしまいます。でも、本当に大切なことは「モノ」でなく、私たちの生活を豊かに感じるのは「何か」と考えることなのかもしれません。そして、「どこで何をしている時が楽しいのか?」と、少し想像してみることが必要のかもしれません。

今回の制作ではそのようなことを学びました。

施工前

緑豊かでよく手入れされた庭に通して頂きました。そこにロープが張られた一角があり、小屋のデザインをご依頼頂きました。次いで、利用用途をお尋ねすると「小さな物置と朝食を食べるスペース」とご返答。

「庭で朝食を食べられるのですか?」と二度聞きしてしまいました。

しかしながら、心の中に「庭で食べる朝食」のイメージが急速に膨れ上がるのを感じました。また、一方で「大変じゃないだろうか?」と現実家の私たちがいました。

でも、数分後には何か全て理解出来ました。私たちは庭を作らせて頂きながら、一度もそんなこと考えたことがなかったのです。否、その想像力がなかった。

朝、朝食を食べる時間は、植物の様子を見るのに一番良い長さと時間かもしれません。毎日見ているような気になる庭も実は大抵数分間にも満たないでしょう?草花のひとつひとつ眺めやる時間を私たちは持っていないかもしれない。

庭を作らず庭を眺める時間を作ること、それが設計のテーマとなりました。

ご提案

よく云われる言葉に「自然の世界には直線がない」というものがあります。しかしながら、「建物」というものは直線の交わりでできています。直線を使わず構造物を作ることは至難の業です。

では、と考えました。柔らかさ、ふくよかさ、歪み、ねじれ。こうした表現を植物の力を借りながら植物に寄り添うように・・・小さな袖壁で、ウチとソト。

建物と庭の目に見えない線を引き出せないか?
そしてその線を消せないか?

庭小屋

右側が小さな物置のドアになってます。庇をふかし奥行きを出しています


この現場では特に職人の手仕事が重要でした。丸みや柔らかさ、うねりは人間の手で生み出す必要があります。その手の「記憶」が小屋に宿ります。


随所に丸みや柔らかさが表れます


裏側にはペット用のドアを設けました


窓はオリジナルで木製両開き窓を制作しました

庭小屋の内部

小屋の天井は化粧板張り、壁はイタリア漆喰塗りで仕上げています


お客様に支給して頂いたステンドを入れています


小さな棚には雑貨と植物を飾っていただいています。好きなものに囲まれる愉しさも、大切だと思います

仕様

主な用途 庭を愉しむ
床面積 6.8m² / 2.06坪
費用 ¥1,600,000(諸費税別)
屋根 アスファルトシングル
床仕上げ アンティークレンガ ホワイトセメント
壁仕上げ イタリア製漆喰塗り
オリジナル木製窓
ドア オリジナル木製ドア
断熱材 なし
設備 照明 コンセント1
備考

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