フィトライフの小屋とは

投稿:2018/11/25

「フィトライフの小屋 = 庭小屋」が生まれた理由

私たちは長い時間、木や石、そして草花と過ごしてきました。小屋作りには様々な要素が必要ですが、フィトライフの小屋の中心にあるのは「庭師のココロ」です。植物や石の持つ魅力、そしてチカラ、輝き、美しさ、それらを最大に活かした空間を作りたい、その中で植物たちと共生する場に佇みたい。そうした願いにも似た気持ちが「庭小屋」を生み出した背景にあります。
 
土を動かし、石を据え、樹木や草花、有用植物を植える造園や農業の行為は、一見すると最初の自然破壊だと言えます。しかし、石や植物と繋がり求めた人の行為でもありました。人の暮らしは、自然を改変し破壊し再編しなければ営めませんが、一方で自然に親しみ、花や木の中に暮らしを求めなければなりません。世界各地に草花や自然に「精霊」を見いだす神話が多く残っていることがその気持ちを表していると思えます。そして、そうした自然との繋がりの記憶がその後「庭」を生み出したのかもしれません。暮らすことと木を育てることは一見何の繋がりもありませんが、私たちの古い記憶の中に、その紐帯感が残っているのではないでしょうか。
 
庭小屋を作り出したきっかけは、庭に置く物置からでした。スチール製の物置の前に植えられた草花は妙に場違いなものでした。しかしながら、物置も生活に必要なものです。なぜ、庭とスチール製の物置は合わないのでしょうか?
 
庭は元来ブリコラージュで作られます。手近な材料を寄せ集め、造形していきます。建築と比べてみればよく理解できます。建築は「目的」に合わせて真っ新な場所に材料を持ち込み制作されます。庭は、本来ある時にはそこにある石を立てて「景石」にし、また、土に埋めて「飛び石」にし、さらに組んで「土留め」にします。目的がどのように変化しても組直せますが、建築ではそれが出来ません。
 
建築の作り方は、時代とともの進化し近代化されていきましたが、庭の中に眠る古層の作り方とは一方乖離してきたと言えます。それがスチール製の物置と植物の間に横たわっている深い溝ではないかと思います。その溝(ギャップ)を現代の庭師として乗り越えたい。その想いが庭小屋になりました。
 
庭小屋は、「暮らし」と「自然」が繋がるもの、自然の中に佇むものでありたいと考えています。

ひとりひとりの夢をカタチに

フィトライフの庭小屋は、ひとつづつオリジナルに作られます。定型化やパッケージ化向けた努力をしたことも何度もありますが、断念しております。それは、立地条件もありますが、何よりもお客様の「夢のカタチ」がひとりひとり違っていたからです。
 
家と異なり「ソト暮らし」は、深く多様なお客様の物語があるように思います。当初、物置のご要望が多いだろうと思っておりましたが、実際にご相談頂いた内容は、それほど単純なものではありませんでした。「庭で朝食を楽しみたい」「遊びにくる孫のために小屋が欲しい」「自宅の庭で教室がしたい」。ご要望を考えると、ひとつづつ窓の大きさが違い、必要な大きさも異なります。断熱や電気配線も違います。「土足で良いのか?」「シンクは必要なのか?」など、庭小屋がその方にとってどんな世界を手に入れたいのかによって、全ては変わってしまうからです。
 
ソト暮らしは、家よりももっと個性的なオリジナルの世界なのかもしれません。私たちの庭小屋は、お客様にとって小屋を購入されるのではなく、ご自分の夢をカタチにされるものだと思いました。

これからもコストの課題と戦いながらひとつづつ庭小屋を制作したいと思っています。

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